企業と社員の新しい関係性

「成長支援」という言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

企業のあり方を見直す動きが高まってきている中、成長支援制度を設ける企業も増えてきています。企業と社員はパートナーであり、社員の成長に貢献することによって社員が成長することが、しいては会社の成長にも繋がる、という考え方が注目されてきています。

かつては長期雇用が保障され、賃金も保証されている時代もありました。

仕事とは好き嫌いでするものではなく会社の方針に従ってするものであって、個人の利益をいかに企業に還元できるかでした。バブルの崩壊や経済成長が低迷する一方で、ビジネスを取り巻く環境の変化は早くなり、新しい働き方が求められてきています。

たとえば、仕事を頑張ろうと思えるのはどんなときでしょうか。

「誰かが自分を必要としてくれる」「自分が貢献できると実感できる」「自分が成長できそうだと思える」こんなとき、人は仕事に対してモチベーションが生まれます。企業においては、最短で自分の希望すること、希望する業務ができるとは限りません。それでも、個人が思い描くキャリアや将来像に対して理解をし、それに対して寄り添うことで、人はモチベーションを持って自分で考えて行動できるようになります。そして、そういう環境ができれば、一人ひとりが自分の能力を発揮できるようになります。そこで働きたいと思われる企業として選ばれるようにもなり、企業の利益にも繋がるはずです。

 

自ら考え、選択できる部下の育成は上司の力も重要

そのためには、上司が与えた指示で部下や社員を動かすのではなく、部下や社員の目指すキャリア像や将来像を把握し、そこに向かって補うべきアドバイスをする姿勢、「成長支援」がこれからは大事になってくるでしょう。ある調査では、「上司が自分のことを支援してくれていると部下が感じることができる3つの要素」というものが報告されています。

  1. 定期的に部下との時間を取る
  2. 部下の強みを引き出して伸ばしている
  3. 部下と目標を共有している

このように、上司やリーダーが部下や社員のパーソナリティーに応じて寄り添いながら、チームをまとめていくことができれば、チームや職場全体のパフォーマンスも向上していきます。

 

成長支援とは成長の機会を与えること

では、具体的に成長支援とは何をすればいいのでしょうか。

成長支援制度を導入する企業が増えてきているとは言え、「部下をほめる」「やる気を後押しする」「やりがいを与える」など、抽象的に理解はしていても、具体的にどう支援していくのかという部分はまだ模索している企業も多いようです。

成長というのは、成功とは違い、明確に目に見えるわかりやすいものではありません。

人によって形も違います。そして、成長するには、適切な課題と環境も必要です。どこに向かえばいいのか、どうなればいいのか、明確なイメージを持たせた上で適切な成長の場を与えることが大切です。それをサポートし、認めることで部下は成長を実感することができるようになるはずです。成長の機会を与えるということは、失敗する可能性もあります。上司であれば、自分がやる方がより迅速に、いい成果を出せるというジレンマもあるでしょう。それでも、1人の人間を本当に成長させるためには、それらを越えて相手に機会を与え、サポートし、認めるというプロセスが必要です。

 

成長支援を実践する手段「コーチング」とは

この成長支援を実践する手段として注目されているのが「コーチング」です。

コーチングとは「自分で考え、行動・挑戦することを支援するコミュニケーション」のこと。最近では、人材開発や組織改革の手段として取り入れる企業も増えています。

コーチングでは、ある問題に対する対応策を、問いかけによって、本人が考えていけるよう支援します。多くの場合は、問題というのは本人の「捉え方」によって引き起こされています。無意識の「捉え方」を認識し、それにきちんと向き合うことで、本人がその後の捉え方を選択し直し、結果として行動が変わるというのがコーチングの一番大切なポイントです。

相手に新しい気づきをもたらし、視点や考え方、行動の選択肢を増やし、目標達成に必要な行動を促進するための効果的な対話を作り出します。本人の目標達成に向けて、思考・行動・言動を見直し、挑戦や変化を自発的に起こす中で、成長を実現します。

コーチは、それを強要したり誘導するのではなく、もともとのその人の能力を自然にうまく引き出します。コーチングとは、対話を重ねるコミュニケーションを通して、一人ひとり個別対応することで、目標達成に必要なスキル・知識・考え方を備え、行動することを支援し、成果を出させるプロセスなのです。

 

具体的な「コーチングの手法」とは

コーチングでまず大切なのは、目標をしっかりと明確にすること。

特に社内コーチングでは、会社が何を求めているかを踏まえて、その目標を達成するためにコーチングを活用していくことが大事になってきます。

そして、コーチングとは、一方通行の指示を与えるだけではありません。相手の意見を中心に据えた「双方向のコミュニケーション」をするのがコーチングセッションです。また、その後には、職場に戻って実践し、その後、再びコーチングを受けて思考し直し、また職場に戻って実践するという「継続した働きかけ」を繰り返していきます。

価値観、考え方、行動パターン、物事の受け止め方、情報処理の仕方が多様化するいま、それぞれに対して「個別対応」していきます。人それぞれスキルや特性は違います。それを理解して、それぞれに合わせて個別対応することが大切なのです。

そこでは「聞く」「質問する」というスキルを使うことはもちろん、「自分以外の人の目標達成に関心を持ち、彼らが目標を達成するためにどのように支援し、どのように力を貸していくのか」というマインドを持つことも重要です。そのため、コーチとなる人はコーチングのスキルや知識のならず、経験が必要になります。

管理職研修などでコーチングを学んですぐ、部下を質問攻めにして嫌がられるようなことがないよう、マインドの大切さや、人間関係構築が大前提であることを再認識しておきましょう。

 

コーチング/ティーチング/メンタリングはミックスで

成長支援を実践する手法としてコーチングをご紹介しましたが、上司・部下という関係の場合、なかなかコーチングのみでうまくいくことは少ないのが現実です。ティーチングとメンタリングも取り入れることで、よりビジネスの現場で効果的に活用できます。

コーチングは、部下や社員の自立性を育み、自責的な思考を醸成して実行力も高めることができます。基本的に、答えは本人の中にある物から引き出すものです。ただ、業務遂行に必要なスキルレベルがまだ十分でなかったり、業務の難易度が高いときなど、経験のある上司やリーダーが指示を与えたり目標管理をする従来の「ティーチング」の方が効果がある場合もあるでしょう。

また、「部下や社員の話したいことを引き出して聞き、気づきを与えて個人のスキルを認めて寄り添い、それを後押しして本人が自分で選択肢を見出して自ら動けるようにする」には、メンタル面の支援も大切になってきます。目標実現のための行動や考え方を支援するのと同時に、業務から離れたところでの精神的な支援「メンタリング」も取り入れることで、長期的な人間関係を作り、信頼関係を構築することもできます。

「コーチング」で継続的にトライし、場合によっては従来のやり方である「ティーチング」も活かし、「メンタリング」で悩みやつまづきに寄り添ってフォローしていく。この「コーチング」「ティーチング」「メンタリング」それぞれのメリットを複合的に活用して、部下や社員の成長支援をしていくことができれば、誰にでもある優れた能力を部下や社員から引き出すだけでなく、ひいては上司やリーダー自身の成長の機会にもつながっていくはずです。

カテゴリー: コーチング

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